My Cinema Talk World: マルホランド・ドライブ

2013/09/09

マルホランド・ドライブ

Mulholland.jpg

映画って人それぞれの解釈や見方があり、正解はないのです。
その中でもデビッド・リンチほど、様々な解釈の仕方を提供してくれる監督さんはいないのではないでしょうか。
リンチさんの多くの作品は、ハッキリとしない「寝て起きた後のような」ぼんやり感が漂っています。
観た後で
「あれは何だったんだ?夢だったの、それとも現実?」
という残尿感っぽさが残り、ついついもう一回...と観てしまうのです。
薄気味悪い作り笑いを浮かべていたり、急に馬鹿笑いしたり、逆に怒りだしたりとにかく不可思議なキャラクターが登場します。
ゾッとしつつ、これから何かが起こる伏線なのかなというワクワク感すら抱かせます。
それぞれの作品への解釈や謎解きもリンチ作品を鑑賞する醍醐味だと思います。
中でも、「マルホランド・ドライブ」は彼の作品の中でも夢見心地感(!?)や不可思議・不気味感だけにとどまらず哀しさが漂う素晴らしい作品で私は大好きです、おそらく彼の作品の中で一番好きです、時間内に凝縮されてる面での完成度はリンチ作品の中の最高傑作だと言い切れます。

先週再び深みにハマり改めて見直した感想などを書き連ねている訳ですが、初めて観たのが公開からしばらくしてからDVDで観たのでかなり昔になるんですね。
やはり1度の鑑賞では釈然としませんでした。
いわずもがなです、彼の作品はリピートが肝心。
見る度に細部のチェックを怠ってはいけません。
結局、2度目で自分なりの解釈を見つけ、3度、4度...「何回観たかな、私...」てなるワケです。

さて内容に話は戻り
マルホランド・ドライブではナオミ・ワッツとローラ・ハリングはそれぞれ二役を演じております。
どちらも難しい役どころといえます。
特に主演のナオミ・ワッツがとにかく素晴らしい、パーフェクト!
準主役的なローラ・ハリングの容姿の素晴らしさ、妖艶さ、演技も賞賛すべきですが、ナオミ・ワッツの演技がそれを上回っている気がします。

あらすじ
ある晩、暗闇の中黒髪の美女(ローラ・ハリング)が乗った1台の車が後ろから凄いスピードでコーナーを下ってくる若者たちの車に追突される。
その場所はマルホランド・ドライブ。
生き残った美女はふらふらと歩き始め、事故現場を離れてある家の一室に身を潜める。
その家の家主である大女優の姪であるベティ(ナオミ・ワッツ)は、みずからも女優をめざしてこの家に暮らす事になっていた。
あこがれのロスでの生活にうきうきしていたベティは部屋の中で怯える黒髪の女性を見つける。
女性の名はリタ。(壁にかかっていたリタ・ヘイワースのポスターを見てとっさに出た名前)
リタは激しい事故の後遺症で記憶を失っていたのだ。
一方、事故現場を検証していた刑事は落ちていたパールのイヤリングから、もう1人重要な人物がこの場に居たことをつきとめ捜索し始める。
時々何かを思い出しそうになるリタをベティは囲まい、記憶を辿る手助けをする。
そんなある日、リタのバッグの中から大金と青い鍵を発見する。
リタの記憶を辿るうち、驚くべき事実が判明して行く。


作品データ
原題:Mulholland Drive
公開:2001年 アメリカ
出演:ナオミ・ワッツ、ローラ・エレナ・ハリング、ジャスティン・セロー、アン・ミラー
監督・脚本:デビッド・リンチ


自分的解釈(以下かなりネタバレあり!まだ見ていない方はご注意ください...というか既に見た立場から書いているので未鑑賞の方は全く分からないと思われます)


【作品の大部分はダイアンの夢…
この物語は前半….というか大半(クラブ・シレンシオから帰宅し、直後ベティが消えてしまうところまで)は、ベティ(ベティは夢の中での名前であり、実際はダイアン)の夢です。
謎のカウボーイに起される赤いシーツの上に横たわるダイアン(冒頭でも登場、赤いシーツのようなものにくるまって寝息をたてている)は、夢の中での希望に満ちたベティとは大違いで疲れ切ってろくに食べ物も食べていない雰囲気です。
現実世界ではカミーラ(夢の中でのリタ)が名の知れた女優でダイアンはカミーラの恋人、カミーラのお陰で端役を貰う恩恵も受けています。
ダイアンの想いは裏切られ、カミーラは地位を手に入れるため監督のアダム・ケシャーと婚約します。
誰もが大女優になること目標としている世界において名の知れた監督に気に入られることは成功の第一歩。
カミーラはそれを勝ち得る事に成功し、逆にダイアンはそれを境に愛するひと(カミーラ)に見捨てられてしまいます。周りからは嘲笑の眼差しで見られるしで夢は一変、転落の人生に変わります。
カミーラへの想いは憎しみと妬みに変わっていきます。
感情を抑えきれなくなったダイアンはついにある男に、カミーラを殺害することを依頼してし
まうのです。

diane.jpg

作品の謎解きするのも今さら、アレですが自分なりに思いついたことを書き並べてみます。
(話があちこちにとんだりしているのはご勘弁下さい)

都合のいい夢…まさにダイアンの独り舞台!
常日頃見る夢がどんなもので構成されているか、この映画を見た後自分なりに少し考えたりしました。
大切な人や愛する人が出てくる夢が大半かもしれませんし、その日初めてであった人で特に印象に残った人物やキーワードのような耳に残った言葉が出てくる事もあります。
心の中に蟠る「やましさ」や「妬み」が起因して見る夢もあります、悪夢と呼ばれる類いです。
ダイアン(夢の中ではベティ)の見た夢は現実の悲しみや苦しみから逃避したい気持ちが無意識に作り出した産物です。
夢の中のダイアン(ベティ)とカミーラ(リタ)の立場は現実と逆転していて、リタはベティに頼らなければ何もできません。
記憶喪失、調べて行くうちにマルホランド・ドライブでの事故に関係しているらしいことに怯えビクビクしながらベティの指示に従っています。
また、周囲の登場人物たちはみんなベティにちやほやし、その褒めちぎりかたときたら不自然で気持ち悪いほどです。
オーディションでのベティの演技も見る者を驚かすほどの賞賛を浴びますが、現実にはオーディションは通らずカミーラ(リタ)が主役に選ばれたのです。
ダイアン(ベティ)はカミーラのようになりたいと望み、自分を捨てて監督のアダム(ジャスティン・セロー)と婚約した彼女を妬みはじめさらにアダムを憎んでいました。
夢の中は、面白いようにすべてがベティの想い通りに動きます。
リタは、ベティのように髪を切りブロンドに染め彼女を真似るようなことさえします。
オーディションのシーンやアダム・ケシャーが登場する場面などは、ほとんどがダイアンが一方的に抱く芸能界(ハリウッドの映画界)のイメージそのもので、彼女の情報も少ないためか稚拙で安っぽくてなんだかゾッとする世界です。
そんな都合のいい夢の中に、時々脈絡がないと思われる謎のシーンが登場します。
少々間抜けな殺し屋の珍騒動。そして自分が見た恐い夢を語るウィンキーズでのダンのシーンです。
夢の中の間抜けな殺し屋の話は、現実でカミーラ殺害を依頼した男であり、お金まで渡して依頼しながら後悔の念に駆られ「失敗してほしい」と願うダイアンの正直な気持ちです。
ウィンキーズの男2人の片方、少し奇妙なほどに怯えたカンジのダンはカミーラ殺害を依頼した時に偶然その場に居合わせダイアンと目が合った男だと思われます。
例えば自分が何か後ろめたい事をした瞬間に、誰かと目が合ったとしたらどうでしょう。
「あの人、こっち見てる。私がおかしなことを考えてるって思ってるんじゃないかな」
なんておかしな妄想が働いてしまうことってないでしょうか。
さらにウィンキーズのお店の裏でダンは気味の悪い黒いオバケのような人を見て倒れてしまいます。
映画の中に何度か登場するこの気味の悪い生き物の正体は、ダイアンのやましい気持ちであり無意識の中の負の感情 ---シャドウの部分--- と解釈できます。
また、キーワードのようにいろいろな人物の口から出る言葉 “This is the girl” は、他でもないダイアンの口から出た言葉で、カミーラの命を奪い自らの人生を狂わせることになる重要な一言です。
自分の罪をなかったことにしようと、他者にそのセリフを言わせ逃げようとしています。

カウボーイの正体

 Mulho1.jpg

この映画を見た人はおおよそ気づいているのではないでしょうか。
時々、現れるカウボーイ姿の男の正体です。
カウボーイは作品中で、三回登場しています。
まず最初の登場はダイアンの見る夢の中で、監督アダムの人生が唐突な展開で転落していきますが、秘書と電話でやりとりしている途中で「カウボーイ」と名乗る男がアダムに会いたがっていると知り、彼は早速会いに向かいます。
向かったところは夜のとある牧場。
「人の態度は...ある程度その人間の人生を左右する、そう思わないか?….馬車の手綱を握るのは私1人だ。君が態度を改めるなら馬車に乗せてやる」
と謎の言葉を残します。
二回目は、現実に戻ったダイアンがアダムとカミーラの婚約パーティで新しい女友達(彼女?)とカミーラがキスした直後、女の子が消えると同時に入れ替わるように登場します。カミーラに裏切られ怒りに打ち震えるダイアンの目の前をさりげなくカウボーイが横切って行きます。
三度目の登場は赤いシーツに横たわる女性(ダイアン)の傍らで「お嬢ちゃん、そろそろ起きる頃だ」と言っています。
一回目のセリフでなんとなく察しがつくかと思いますが、カウボーイはダイアンに審判を下す ”何ものか” なのです。
死神、悪魔、ダイアンの運命を天からじっと見張るもの、そういった類いです。
このカウボーイは、ダイアンを見張りながら彼女が悔い改めやり直す気持ちがあればなんとか助けようと提案します。
それが夜の牧場でアダムに言った言葉です。アダムに言っているのではなくダイアンに向かって言っていたのです。

---------------------------------------------------------------------------------------------

はっ....!
ここで気がつけば、超長ーいブログになっていました^^;
一旦切ってPart2につなげる事にします。。。
(クラブ・シレンシオと青い鍵と箱のお話など...今夜up予定)

余談ですが、
映画.comの「映画史上最高の女性キャラクター100人」にベティが33位で結構上位に入っていますね。