My Cinema Talk World: マルホランド・ドライブ 前回の続き

2013/09/13

マルホランド・ドライブ 前回の続き

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すっかり途中になってしまいました…

解釈として記すならもっと丁寧に…夢の中の登場人物などの意味合いなどもっと仔細に説明するのもいいと思いましたがそれは別な機会にいたします。
なぜならば、何回か映画を見直してみると「あれ?ここはもしかして考えていた意味合いと違ってくるのでは??」
なーんてコロコロ変わってくる部分もあったりして
頭の中がそれこそ収拾がつかなくなってかなりの疲労感が伴うのですよね。
ではでは...「マルホランド・ドライブ」のおおまかな解釈を引き続き散らしてみます。
ネタバレを含みますのでご注意下さいませ。



【クラブ・シレンシオ
いきなり“silencio”ってスペイン語できましたが。
クラブ・シレンシオの場面は解釈が難解であり、この不可思議な空間こそさまざまな捉え方が出来る部分です。

リタが真夜中に突然
「Slencio,silencio…No hay banda,No hay orquesta...」
と寝言で謎の言葉を繰り返します。
「一緒に来て」というリタに導かれやってきたのが件のクラブ・シレンシオです。
とても不思議で恐い空気が漂う異空間です。
リンチお得意の赤いカーテン、ブルーの扉、ブルーのライト、白い煙...などなど重要なディテールがちりばめられた会場でベティとリタが席につくかつかないうちに恐ろしい形相の男がおおげさな身振りで口上をはじめます。
「No hay banda,No hay orquesta…」(楽団はいません、オーケストラもいません
それはリタが寝言で言っていた言葉そのものでした。
「音はしますがすべて録音されたものです….これらはすべてまやかしです」
男が話す後ろには青い髪の女性の姿が見えます。
会場にぽつりぽつりと見られる観客は無表情。
観客と青い髪の女性は死者のようにも見えます。
口上を続けながら男が大きく手を振り上げると、雷鳴と蒼く光が会場を包みベティが痙攣し始めます。
まるでベティに「死」を宣告しているようです、この後この人達が待つ「死」の世界に向かうことを示唆しているのでしょう。

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ベティの痙攣は、実生活で犯した人を殺めてしまった罪悪感と何者かに追われている恐怖心の表れです。
白い煙とともに男の消えた後に現れるのは「ロサンゼルスの泣き女」と紹介される歌手。
彼女の素晴らしい歌声、そして注目すべきはまるでベティの気持ちをそのまま歌にしたような歌詞です。
ベティとリタは寄り添いながら、その歌に涙します。
見る側も最初はこの歌詞と寄り添ってすすり泣く二人に誘われるように涙が出そうになるでしょう...
でも、しばらく断つと「泣き女」は倒れてしまいその場から運び出されますがそれでも哀しい歌は流れ続けています。
この歌も「まやかし」なのです。
ダイアン(ベティ)が自己憐憫を連ねて、まるで自分の罪をなかったことにしようと周囲に「許しを乞う」まやかしの歌です。
「ロサンゼルスの泣き女」とはダイアンのこととも言えるでしょう。
クラブ・シレンシオは、ダイアン(ベティ)を見張るカウボーイが準備した「死への入口」であり、「夢の出口」でもある場所なのだと私は解釈しました。
ハリウッドで成功する夢も失い、自分のエゴで1人の女性を死に追いやってしまった...カウボーイはダイアンには「死」を与えるしかないとこの場所で審判を下したのだろうという見方ができます。

【青い箱と青い鍵
クラブ・シレンシオで泣き女の歌が終わる頃に、ベティは自分のバッグの中にある青い箱を取り出します。
帰宅後、ベッドの上に青い箱を残しベティの姿は消えてしまいます。不安そうなリタが「ベティ!」と声をかけてもベティは二度と現れませんでした。
自分なりに未だに心に引っかかることは、この場面で今までひと言もスペイン語など話さなかった(寝言で喋った以外は)リタがなぜ「¿Dónde estás?(どこにいったの?)」とスペイン語をポツリと話したのかな?ということです。
誰か、これについて見解があれば教えてほしいです、ほんと細かいですが気になっています。
バッグから青い鍵を取り出し、箱を開けたそのとたん箱が絨毯の上に落ち、リタまでもが消えてしまいます。
続くシーンでは、ルースおばさんが扉を開け様子をうかがいますがシーンと静まり返った部屋の中は箱は消えていて、ベティやリタがそこにいた形跡もありません。
夢が終わったということです。
開けても空っぽな青い箱は一体何を意味するのか...それはダイアンがロスにやって来た頃の「女優になる夢」の具現なのだと思います。
青い鍵は夢を叶える為に使うものであったのに、実際は「殺人成功の示唆」に使われてしまったのです。
時々出てくる老夫婦も青い箱と同じ意味合いを持っています。
夢の中では愛想笑いを浮かべつつ、ベティと別れた後にはいやらしい笑いを受けべるあの老人たちは青い箱から小人になって出てきました。
表向きは愛想良くちやほやしてくれるような人たちから遠ざかってしまった、すなわち彼女の女優になる夢が消えてなくなったことを意味しています。
また、ラスト部分でノックする音(刑事がやってきたと思われる)とともに、この老夫婦達が笑いながら不気味にダイアンに迫ってきます。
彼女の夢が崩れ去り、恐怖感、絶望感しか残っていないことがこの幻覚を見せているのでしょう。
耐えきれず、彼女は自らの手で決断を下します。実際は彼女を裁く人物がやらせているのでしょう….

【ルースおばさんは何者か
ベティが夢の中で部屋を借りる事になる「ルースおばさん」は実際のところどういう人物なのでしょう。
夢の中では往年のハリウッド女優(?)でベティが女優への道を進むうえで、さまざまなコネを提供してくれる人物。
実生活でダイアンは、亡くなった叔母の遺産を譲り受けたと言っています。(ルースおばさんの名前は出てきません)
ダイアンに遺産をのこした叔母と夢の中に出てくるルースおばさんは別な人だと考えられます。
夢の中に出てくるルースおばさんの姿は、実生活の中でたまたま見かけた知らないおばさんなのかもしれませし、亡くなったおばさんかもしれません。
ただ、ダイアンがオーディションなどで成功しなかったことから考えても夢の中のように映画界で顔がきく人物ではなかったようです。
余談になりますが、夢の最初の方でよそ者である女(リタ)がルースおばさんの屋敷に忍び込む姿を見かけてもおばさんは顔色一つ変えず平然としています。
(夢の中であることを意味する)

以上


それと「マルホランド・ドライブ」に登場するクラブ・シレンシオは、それをイメージしたお店がパリに実際に作られたそうです。
会員制のクラブだとか…

デビッド・リンチの会員制クラブ、仏パリで今週オープン

今でもあるのでしょうか??