My Cinema Talk World: リトル・オデッサ ― 90年代映画の傑作

2017/05/21

リトル・オデッサ ― 90年代映画の傑作


兄弟愛と『アメリカンヒストリーX』の衝撃


90年代、劇場で見られなかった映画をWOWOWの番組表を綿密にチェックして見ていた時期があった。
その頃、本作『リトル・オデッサ』をみて尠からず衝撃を受けたのだった。
何が衝撃だったか ――
作品そのものの持つ雰囲気とテンポはそれまでに見たことにないものだったし、見るものを突き放した残酷な結末にはさすがにたじろいでしまったのだ ―― タイトルから勝手にほのぼのとした作品だと勘違いしていたから...

監督 ジェームズ・グレイ、若干25歳のデビュー作。
彼の作風である、ノワールではあるがオープニングから終始流れる静謐な空気は『Berliner Messe - Sanctus』の音楽の効果もあるのだろう。

リトル・オデッサ(原題:Little Odessa)

監督:ジェームズ・グレイ/製作年:1994年

ストーリー
舞台はニューヨーク・ブルックリンのブライトン・ビーチ――リトル・オデッサと呼ばれる地区。
ここで生まれ育ったロシア系ユダヤ人ジョシュア(ティム・ロス)は、このエリアを牛耳るマフィアのボス ヴォルコフの息子を殺したために故郷に戻れない状態にあった。
ヒットマンとして自らの手を汚してきた彼にリトル・オデッサでの仕事が舞い込み、仕方なしにこの地に戻ることになる。
喜んでくれるのは久々に会う弟のルーベン(エドワード・ファーロング)だけ。
母のイリーナ(ヴァネッサ・レッドグレイヴ)は脳腫瘍で余命いくばくもなく、父のアルカディ(マクシミリアン・シェル)はジョシュアを家に入れるつもりもない。
ジョシュアはかつての恋人アラ(モイラ・ケリー)と再会、忘れかけていた恋が再び燃え上がる。
一方、ヴォルコフは、ジョシュアが戻っている噂を聞きつけ彼の行方を追っていた。
アルカディは、ヴォルコフに借金がありジョシュアの居所を教えるよう迫られていたが、ついに息子を裏切ってしまう…

キャスト
ジョシュア・シャピラ:ティム・ロス
ルーベン・シャピラ:エドワード・ファーロング
アラ:モイラ・ケリー
イリーナ・シャピラ(母):ヴァネッサ・レッドグレイヴ
アルカディ・シャピラ(父):マクシミリアン・シェル
ボリス・ヴォルコフ:ポール・ギルフォイル
サシャ:デヴィッド・ヴァディム

スタッフ・作品情報
監督     ジェームズ・グレイ
脚本     ジェームズ・グレイ
製作     ポール・ウェブスター
音楽     ダナ・サノ
撮影     トム・リッチモンド
編集     ドリアン・ハリス
製作会社     ニュー・ライン・シネマ
配給     Fine Line Features(アメリカ)
           メディアボックス=シネセゾン(日本 )
公開     1995年9月19日(アメリカ)
            1995年12月23日(日本)
原題     Little Odessa

故郷リトルオデッサにやむなく戻るジョシュア

たまにこの映画のような展開になるたび
「今の時代だったら、こんな展開にならなかったのに...スマホで連絡してたら」
などと不覚にも考えてしまう。
それにしても、この映画は1994年の映画。
兄を慕う弟と家族内の紛紜、そしてあのラストシーンはどこかで覚えがないか。
そう、『アメリカン・ヒストリーX』だ。
マフィアと白人至上主義 ―― そこにあるのは憎しみ、負の連鎖。
ジョシュアとルーベン ――
ん?何やら宗教の匂い…
ジョシュア→ヨシュア記。
逃れの町(=リトル・オデッサ)で血の復讐とか...
宗教に詳しくないのでこれ以上は掘り下げられないが。

脳腫瘍を患う母親に寄り添うルーベン

人の命を奪う稼業をしている冷徹なジョシュアが諸悪の根源なのだろうか。
根底にもっと深い問題が潜んでいるのではないか。
すぐにルーベンに手をあげる父親。
それを見てジョシュアは、父親を殴り飛ばす。
映画では特に語られないが、ジョシュアにも暴力を振るっていたことがうかがえる。
自分のいいなりにならないから家の外から放り出し、久々に戻った息子に
「お前は家族をダメにする」
と言い放つ。
本来ならば子どもを突き放すのではなく、向き合わねばならないところだ。
病弱な妻を看病はするが、薬を買い忘れたという ―― 実は外には若い別な女の存在があった。
父と息子の憎しみ合いが悲劇を招いてしまったのだろう。

雲ひとつない澄み渡った青空に真っ白いシーツを干すアラ。
その下で悲劇は起こる ―― やがて怒涛のラストになだれ込む。
容赦なく対極を据えるカメラワークは、監督の凄さを見せつけられる。
エンディングに流れるアルヴォ・ペルトの『Berliner Messe - Sanctus』は、レクイエムのように胸にジーンとしみてくる。
改めて傑作だと思う。



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